議事録をAIに要約させる前に、決まったことを一行で書く
- AI議事録を入れたのに、会議の後の動きが変わらない人
- 「言った・言わない」が減らないと感じている管理者
- 会議を減らしたいが、どこから手をつけるか迷っている経営者
AIで議事録が自動で作れるようになりました。
録音を渡せば、発言が文字になり、要点がまとまり、話者ごとに整理される。手で書いていた頃を思えば、大きな進歩です。
それなのに、会議のあとの動きが変わらない。同じ議題がまた来月出てくる。「あれ、どうなりました」が減らない。
理由ははっきりしています。AIは、話されたことを要約できます。でも、決まったことを決めてはくれません。
要約と決定は、別のものです
まず、ここを分けます。
要約は、話された内容を短くしたものです。誰が何を言ったか、どんな論点があったか。これはAIが得意です。
決定は、その中から「これで行く」と選ばれたものです。選ぶのは人であって、AIではありません。
会議のあとに必要なのは決定のほうです。けれど、AI議事録を入れると、要約が手元に残ります。要約は読みやすいので、決定が残ったような気持ちになります。この気持ちが、いちばん危ないところです。
要約を読み返しても、次の動きは決まりません。書いてあるのは「こういう話が出ました」であって、「こうします」ではないからです。
会議が終わったのに動かない三つのパターン
現場で見る、動かない会議には型があります。
1. 決まったが、持ち主がいない
「対応する方向で」と決まった。誰がやるかは決まっていない。要約には「対応する方向で合意」と書かれる。誰も動かない。
2. 決まったが、いつまでか決まっていない
「早めに」「次回までに」。この言葉は、期限に見えて期限ではありません。次の会議で「まだです」と言えば済んでしまいます。
3. 決まっていないのに、決まったことになっている
いちばん多いのがこれです。反対意見が出ないまま話題が変わり、要約では「特に異論なし」となる。あとで「そんなつもりはなかった」と言われる。
三つとも、AI議事録では防げません。書き起こしの精度が上がっても、決定の構造が空いていることは埋まらないからです。
会議のあとに残す一行
そこで、要約とは別に一行だけ残します。形は決まっています。
【決定】〇〇を、△△が、□□までに行う。
三つの要素が入っていれば十分です。
- 何を(決まった内容)
- 誰が(持ち主の名前。役職ではなく名前)
- いつまでに(日付。「早めに」は禁止)
この一行が書けないなら、その議題は決まっていません。決まっていないものを決まったことにしないために、書けるかどうかで判定します。
そして、決まらなかった議題には、もう一行足します。
【保留】〇〇は決めない。次に決めるのは△△が、□□までに。
保留も立派な決定です。保留であることと、次に誰が決めるかがはっきりしていれば、宙に浮きません。いちばん困るのは、決まったのか保留なのか分からない状態です。
AIに任せるのは、要約ではなく「抜けの検出」
では、AIはどこで使うのか。
要約を作らせるだけなら、もったいない使い方です。効くのはこちらです。
この議事録から、決定事項を「何を・誰が・いつまでに」の形で抜き出してください。三つのうち欠けている項目があれば、欠けていると明示してください。埋めなくて構いません。
ここで大事なのは、「埋めなくて構いません」の一言です。これを言わないと、AIは空欄を自然な言葉で埋めてしまいます。「担当:関係部署」「期限:次回まで」。読めてしまうので、欠けていることに気づけません。
空欄は、埋めるより見えるほうが価値があります。 見えた空欄は、その場で聞けば埋まります。埋められた空欄は、あとで揉めます。
AIの出力を確認するときに、正しさより先に前提を見る話は、AIの答えを見るとき、正しさより先に「前提」を見るにも書きました。議事録も同じで、きれいに整っていることと、抜けがないことは別です。
「言った・言わない」が減らない本当の理由
議事録を取る目的の一つに、「言った・言わない」を防ぐことがあります。
AI議事録なら発言が全部残るので、この問題は解決しそうに思えます。実際には、あまり減りません。
理由は、争点が発言の有無ではなく、解釈だからです。
- 「検討する」と言った。言ったが、やるとは言っていない。
- 「基本的に問題ない」と言った。基本的に、が付いている。
- 「持ち帰る」と言った。持ち帰った結果は言っていない。
全文が残っていても、この手のずれは残ります。むしろ全文があると、どちらの解釈も文中から拾えてしまい、話が長くなります。
これを止めるのが、さきほどの一行です。発言の記録ではなく、決定の記録があれば、争点は「その一行に合意したか」だけになります。合意していない一行は、その場で直せます。
会議を減らしたいなら、まず決定の数を数える
もう一歩進めます。
会議を減らしたい、という相談はとても多いです。そのとき、時間や回数から手をつけると、たいてい戻ります。減らした分の相談が、個別の電話やチャットに移るだけだからです。
先に数えるのは、その会議で出た決定の数です。
- 60分の会議で、決定が0件だった。
- 決定はあったが、持ち主が空欄だった。
- 決定はあったが、参加者の半分に関係がなかった。
決定が0件の会議は、情報共有です。情報共有なら、集まらなくてもできます。決定が出ているが持ち主が空欄なら、それは会議の問題ではなく決め方の問題です。参加者の半分に関係がないなら、呼び方の問題です。
「会議が多い」は症状で、原因は決定の設計にあります。 症状に手をつけると戻り、原因に手をつけると減ります。
記録を厚くするより、判断を一行にする
AI議事録は良い道具です。手で書き起こす時間はもう戻ってきません。
ただ、道具が良くなると、記録は厚くなります。厚い記録は、読まれません。読まれない記録は、無いのと同じです。
だから、順番をこうします。
- 会議の最後に、決定を一行で書く(何を・誰が・いつまでに)
- 決まらなかったものは、保留と次の持ち主を一行で書く
- 残りの詳細は、AIの要約に任せる
人が書くのは一行、AIが書くのは残り全部。 この分担にすると、記録は厚いままでも、動きは変わります。
会議のあとに残すべきものは、話した証拠ではありません。次に誰が何をするか、その一行です。
会議を減らす前に、決定の設計から——tugiloは、ツールの前に「判断の設計」を整えます。会議体の見直しも、記録の型づくりも、お気軽にご相談ください。