AIは8割で動かす。「毎回違う仕事」は、あとから育てる
- 設計が進まずAI導入が止まっている経営者・担当者
- 「全部決めてから」と考えがちな現場責任者
- 8割で動かして育てたい方
AI導入の相談を受けていると、かなりの確率で、こんな声を聞きます。
「このケースはどうなりますか?」 「毎回ちょっと違うんですよね」 「想定どおりにいかない仕事が多くて…」
とても真面目な反応です。現場をちゃんと見ている証拠でもあります。 ただ、ここにAI導入が止まる大きな原因があります。
最初に「毎回違う仕事」を詰めすぎると止まる
AI活用がうまくいかない現場ほど、最初の段階でこうなっています。
- すべてのケースを洗い出そうとする
- 「この場合はどうする?」が増えていく
- 判断基準が細かくなりすぎる
- 結果として設計が終わらない
その結果、実装に入れない、試す前に疲れる、誰も触らないまま時間だけが過ぎる、という状態になります。 これは、AIの性能の問題ではありません。考える順番の問題です。
現場の仕事は、もともと「毎回違う」
冷静に考えると、現場の仕事は最初からこうです。
- 条件が毎回少しずつ違う
- 取引先や相手によって判断が変わる
- 想定外は必ず起きる
- その場判断が日常的に発生する
にもかかわらず、AI導入の場面になると、「全部を先に決めておかないと怖い」という心理が強く働きます。 これは責任感があるからこそ、起きてしまう反応でもあります。 ただ、この時点でAI導入は止まりやすくなる。
うまくいっている会社は「8割」で動かす
一方で、AI活用がうまくいっている会社は、驚くほど割り切っています。
- よくある8割の流れだけを先に決める
- 残り2割は「決めない」
- 困ったケースは止めずに記録する
最初から完成させようとしません。 この「未完成さ」が、結果的に一番強い運用になります。
なぜなら、実際に起きたケースだけが、本当に考える価値があるからです。
相談の場でよく出る、2つの進み方
ここで、よく見る2つの例を挙げます。
ケース①:最初から詰めすぎて止まった会社
- 現場の声を丁寧に拾う
- 「この場合は?」をすべて想定
- 判断ルールが分厚くなる
結果、「これを理解してからじゃないと使えない」状態になり、誰も触らなくなります。 仕組みは立派ですが、動いていない。
ケース②:8割で動かして回り始めた会社
- まず一番多い流れだけを整理
- 困ったらメモを残す
- 判断は人がやる
すると、実際によく起きる困りごとが見える、本当に必要な修正点が浮かぶ、少しずつ仕組みが育つ。 こちらは、最初は雑でも、確実に前に進む。
tugiloが「仮置きで動かす」と言うときの進め方
tugiloではよく、「まずは仮置きで動かしましょう」と言います。 これを「あとで考える」「とりあえず」だと誤解されることがあります。でも実際は逆です。
- 「8割」をどう定義するか … 一番よくある流れを、1つだけ決める。残りは「それ以外」でよい
- 「困ったとき」の記録の仕方 … どこにメモを残すか、誰が集めるか。形式は雑でよい
- 「見直すタイミング」を決める … 月1回でも、10件たまったらでもよい。定期的に見るだけ
仮置きだから修正できる、仮置きだから使われる、仮置きだから現実が見える。 最初から完璧に作った仕組みほど、現場では修正できず、静かに使われなくなっていきます。
tugiloの相談では、「8割」の定義を一緒に決めるところから始めるケースがほとんどです。 「一番多い流れはどれですか?」と聞いて、現場の人が「だいたいこれ」と挙げた1つを、とりあえずの8割にする。
細かい条件分岐は考えず、「それ以外は記録しておいて、あとで見る」で進める。 このやり方だと、設計の詰めに時間を取られず、1〜2週間で動かし始められることがほとんどです。
「あとから育てる」は、後回しではない
「あとから育てる」と言うと、適当、その場しのぎ、責任逃れ、そんな印象を持たれることがあります。 でも実際は、逆です。
- 動かすから見える
- 使うから分かる
- 直せるから続く
最初から完璧に作った仕組みほど、現場では修正できず、静かに使われなくなっていきます。
なぜ「8割で動かす」のが怖いのか
8割運用に不安を感じる方は少なくありません。 抜け漏れがありそう、あとで怒られそう、責任を取ることになりそう。この不安は、とても自然です。
ただ、実際に怖いのは動かさないことです。 使われない仕組み、改善されない業務、変わらない現場。これが一番、時間とコストを消費します。
想定外は「集めてから考える」
机の上で考えた想定と、現場で起きる出来事は、ほとんど一致しません。 起きないことを心配して、起きることを見落とす。
これを避ける一番の方法は、順番を守ることです。
- 8割で動かす
- 困ったケースを集める
- 本当に必要なものだけ整える
この流れが、一番現実的で、失敗しにくい。
「困ったケースを集める」と言っても、最初は高度な仕組みは不要です。 共有フォルダに「困ったことメモ」を1つ作る、Slack にチャンネルを1つ作ってそこに投げる、それで十分。
形式にこだわらず、とにかく止めずに記録することが大事です。 集まったものを見て、「これは本当にルール化する価値があるか」を判断する。 そうすると、机上で考えた「想定外」と、現場で起きた「想定外」の違いがはっきり分かります。
相談の場でtugiloが「要注意」と判断する場合
設計が進まず止まっている現場では、次のような状態になっているケースをよく見かけます。
- 「このケースは?」が尽きない → 8割を先に決める話を提案します。「残り2割」は決めない、で進める
- 「ルールが固まってからでないと怖い」という声が強い → ルールは動かしながら固まる。まず動かす前提で、最小限のルールだけ決めることを提案します
- 「全部のケースを網羅したマニュアル」を作ろうとしている → マニュアルは厚くなるほど使われない。8割の流れだけ書いて、残りは「記録してから決める」形を提案します
動かすことを最優先にすると、設計の詰め方が変わります。
「8割で動かす」を実践している会社では、「今月の困ったケース」を定期的に見る時間を設けているケースをよく見かけます。 月1回、30分でもよい。
集まったケースを見て、「これはルール化する」「これはこのままでよい」を判断する。 この積み重ねが、現場に合った仕組みを作っていきます。
tugiloの相談でも、この「見る時間」の作り方から一緒に決めることがあります。
AI導入は「完成」させない方がうまくいく
AI活用がうまくいっている会社ほど、「完成」という言葉を使いません。 今はこの形、現場に合わせて少しずつ変える、使いながら育てる。
AIは、導入して終わるものではなく、運用の中で育つ道具です。
3本を通して伝えたかったこと
- AIツールが増えると疲れる理由
- 人が詰まるのは能力ではなく設計の順番
- 8割で動かす方が、結果的に精度が上がる
すべてに共通しているのは、人が疲れない順番で考えるという一点です。
AIは、人を追い込むためのものではありません。仕事を回し続けるための道具です。
tugiloから一言
私たちは、最初から完璧を求めません。8割で動かし、困ったケースを記録し、現場から学ぶ。その順番が、長く使われるAI導入を作ります。
AI導入の設計でお悩みがあれば、お気軽にご相談ください。