"何を作るか"より先に決めること

この記事はどんな人向けか
  • システム開発を検討しているが、何から決めればいいか迷っている経営者・担当者
  • 「思っていたのと違う」「現場が使ってくれない」を防ぎたい方
  • AIで作れる時代に、設計で何を決めるかを知りたい方

「どんなシステムを作りたいですか?」

開発の相談を受けるとき、最初に聞かれがちな質問です。 でも私は、そこから入らないようにしています。

失敗するプロジェクトほど、 "何を作るか"から話し始めるからです。

画面のイメージ。 機能の一覧。 入力項目の数。

それらは確かに必要です。 でも、それより先に決めるべきことがあります。

それを決めないまま進めると、完成した後に必ずこうなります。

「思っていたのと違う」 「現場が使ってくれない」 「結局Excelに戻った」

技術の問題ではありません。 設計の問題です。


1. 何を"管理しないか"を決める

多くのシステムは、"全部を管理しよう"とします。

進捗も、履歴も、入力内容も、 できる限り細かく。

でも、実際の現場で必要なのは"例外"だけであることが多い。

ある現場管理システムの相談では、

  • すべての作業を記録したい
  • すべての工程を見える化したい
  • 日報も詳細に入力させたい

という要望がありました。

そのまま作れば、立派な管理システムになります。

でも話を分解すると、本当に困っていたのは "遅れている案件が把握できないこと"でした。

通常案件は問題なく進む。 問題は、遅れたときだけ。

そこで設計を変えました。

  • 通常案件は簡易入力
  • 遅延だけ自動で検知
  • 例外だけ通知

全部を管理するのではなく、"例外だけを管理する"。

入力項目は半分以下になりました。

もし最初の要望どおり作っていたら、 きっと現場は使わなかったと思います。


2. 誰が判断するのかを決める

機能を増やせば、できることは増えます。

でも、判断者が曖昧なままでは必ず止まります。

ある受発注システムの改善では、

  • 承認フローを追加したい
  • チェック項目を増やしたい

という話が出ました。

理由は「ミスを減らしたいから」。

でも実際に判断していたのは、常に同じ一人でした。

だったら、

  • 全員にチェックさせる必要はない
  • その人が見れば十分

承認フローを増やすのではなく、"判断者を明確にする"。

処理時間は短くなり、ミスも減りました。


3. AI時代は、作る前の設計がさらに重要になる

ここが今、特に大きく変わっているところです。

AIでコードは書けます。

画面も作れる。 APIも作れる。 要件書のドラフトも出てくる。

だからこそ、危険も増えました。

"とりあえず動くもの"が簡単に作れてしまう。

設計が曖昧なままでも、 それっぽいものが完成してしまう。

以前は、作ること自体がハードルでした。 今は違います。

作る前の判断が、最大のハードルです。

AIが得意なのは、 決められた範囲の中で最適解を出すこと。

でも、

  • 何を範囲にするのか
  • 何を入力させるのか
  • どこからどこまで任せるのか

この"線引き"は、人が決めなければいけません。


4. AIを使う前に決めること

AIを組み込むときも同じです。

「AIで何かできませんか?」

という相談は増えました。

でも私は、こう聞きます。

「AIに任せたいのは、どの部分ですか?」

例えば、

  • 日報を全部AIに書かせたい

という話が出たことがあります。

でも分解すると、本当に欲しかったのは

  • 作業時間の自動集計
  • 遅延傾向の可視化

でした。

日報を"書く"ことが目的ではない。

状況を"把握する"ことが目的。

ならば、

  • 入力はボタン化
  • 要点だけAIが抽出
  • 例外だけアラート

全部をAIに任せるのではなく、 判断に必要な部分だけを任せる。

AIは万能ではありません。

でも、設計が明確なら非常に強力です。


5. tugiloならどうするか

私が最初にやるのは、

  • 何が一番面倒か
  • どこで止まるか
  • 誰が困っているか
  • 何をやめたいか

を分解することです。

そして、

  • 管理しないものを決める
  • 判断者を決める
  • 例外を定義する
  • AIに任せる範囲を決める

ここまで整理してから、初めて設計に入ります。

だから、作るものは意外とシンプルです。

でも、現場に残ります。


おわりに:システムの失敗は、作る前に始まっている

技術は進化しました。

でも、 "何を作るか"より先に決めることは、むしろ増えています。

AI時代だからこそ、 設計の価値は下がらない。

むしろ上がっています。

システムの失敗は、作った後に起きるのではありません。

作る前に、始まっています。

「何を管理しないか」「誰が判断するか」から一緒に整理し、作る前の設計から伴走できます。