「全部自分で分かっている」が一番危ない

―― 個人事業主の属人化という静かなリスク

この記事はどんな人向けか
  • 判断やノウハウを自分で抱えている個人事業主・フリーランス
  • チーム化や規模拡大を考えている方
  • AI活用を検討しているが土台が曖昧な方

結論から言うと、「全部分かっている」は強みだが、外に出していないと自分が止まった瞬間に止まってしまう。 業務を言語化し構造化することで、休める・広げられる・AIもうまくいく。以下では、属人化というリスクと、整える進め方をまとめます。

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暗黙知は資産ではなくリスク

頭の中にあるノウハウ。それは強みでもあります。でも同時に、共有できない、引き継げない、客観視できないという弱点も持っています。自分は分かっている。だからこそ、書かなくても大丈夫だと思いがちです。

忙しくなったとき、体調を崩したとき、チームにするとき。その瞬間に問題になります。暗黙知は便利ですが、構造化されていない知識は脆い。自分が止まった瞬間に、業務も止まります。


具体例:コンサルBさん、体調を崩したら

経営コンサルタントのBさんは、5年続けてきた個人事業主です。顧客ごとの「この人はこう言うと動く」「値引きはここまで」「急ぎのときはこの手順」を、全部頭に入っていました。メモは取るが、体系的には整理していない。

ある日、体調を崩して2週間休むことになりました。進行中の案件が3件。Bさんは「自分しか分からない」と気づきます。依頼主に状況を伝えるにも、引き継ぎ用の資料がない。結局、ベッドでスマホを握りしめて、細切れで指示を出し続けました。休養になったかどうか怪しい2週間でした。

「全部自分で分かっている」のは強みですが、外に出していないと、自分が止まった瞬間に止まってしまうのです。


業務を書き出してみる

一度、書いてみてください。依頼が来る、内容を確認する、見積を出す、承認をもらう、着手する、納品する、請求する、入金確認する。当たり前の流れです。業種によって「打合せ」「校正」「検収」など、細かいステップは増えますが、大枠はだいたいこの形です。

でも、書くと気づきます。「あ、この判断基準は曖昧だな。」例外が見えます。急ぎ対応、特別値引き、分割請求、仕様変更。自分では「感覚でやってる」と思っていても、書き出すとパターンがある。ここまで整理できて、初めて業務が"見える"。そして、誰かに渡せる形になります。


具体例:書き出したら見えた「例外の穴」

Bさんは休み明け、一度フローを書き出してみました。「見積を出す」のところで止まった。「いつ値引きするか」が頭の中では分かっているが、文章にすると「リピート顧客で年間○○万以上なら10%」「紹介案件なら初回5%」と、条件がいくつも出てきた。自分では「感覚でやってる」と思っていたが、実はパターンはあった。

「急ぎ対応」も同じ。実際には「納期1週間以内」「追加料金は○○円/日」と決めているはずなのに、口頭で「お願いします」と言われると、つい曖昧に返していた。書き出したことで、判断の抜け穴に気づけました。

Bさんはその後、「値引き基準」と「急ぎ対応のルール」を1ページのドキュメントにまとめました。体調を崩したとき、この1枚を渡せば最低限の判断は誰かに任せられる。自分が戻ってきたときに、どこまで進んでいるかも追いやすくなりました。


言語化は未来の自分を助ける

手順書を書くのは、他人のためだけではありません。未来の自分のためです。半年後、忙しくなったとき、新しい挑戦をするとき。言語化された業務は、迷いを減らします。そして、判断を減らします。「前回どうしたっけ?」と思ったとき、1枚のドキュメントを見れば済む。その積み重ねが、いずれ誰かに渡せる資産になります。


やらないこと:完璧なマニュアルを目指さない

属人化を減らすと聞くと、「全部をマニュアル化しないと」と思いがちです。でも、それは続きません。tugiloでは、最初から完璧を狙わないことを推奨します。

  • 書くのは 1枚で足りる範囲(判断が迷いやすいところだけ)
  • 「例外」から先に書く(急ぎ、値引き、仕様変更など)
  • 文章が粗くてもOK(後から直せる形にしておく)

重要なのは、暗黙知をゼロにすることではなく、「止まらない形」にすることです。

たとえば「値引き判断」「急ぎ対応」「仕様変更の受け方」だけでも外に出せれば、休んだとき・人に任せたいときの詰まりが減ります。全部を書かない勇気が、継続のコツです。


AIは"外に出せる人"からうまくいく

AIがうまくいく人の共通点があります。自分の思考を言葉にできる人です。前提を説明できる、条件を整理できる、例外を定義できる。これができる人は、AIを使うのも上手い。なぜなら、AIは"文脈"を食べているからです。文脈を外に出せないと、AIも力を出せません。属人化を壊すのではなく、整える。その結果として、AIもうまくいくのです。


属人化を壊すのではなく、整える

個人事業主の強みは、判断の速さ、柔軟さ、経験値。これを壊す必要はありません。でも、フロー、判断基準、状態管理を外に出すことで、安定します。休めるようになります。広げられるようになります。完璧なマニュアルを目指さなくていい。「新人に渡して説明しやすい最低限」だけでも、十分です。


具体例:Web制作のCさん、チーム化の壁

Web制作のCさんは、個人で5年やってきたあと、初めてアシスタントを雇いました。「自分は全部流れを把握している」と思っていたのですが、いざ引き継ごうとすると、判断の根拠を言葉にできなかった。

「このデザインは直す」「この文言はこのまま」と言いながら、なぜそう判断しているか説明できない。アシスタントは「なぜか分からないので、毎回聞くしかない」状態に。Cさんは「教える時間」で逆に忙しくなり、半年で挫折しました。

後から振り返ると、「クライアントの業種によって許容範囲が違う」「過去のクレームから学んだルールがある」といった前提が、全部頭の中にあった。言語化していなかったから、渡せなかったのです。

Cさんはその後、よくある判断パターンを「判断基準メモ」として書き出し始めました。完璧なマニュアルは目指さず、「新人に渡して説明しやすい最低限」だけ。それでも、同じ質問を何度も受けることが減り、自分が不在のときの対応がしやすくなったと言っています。

言語化は一気にやらなくて大丈夫です。今回の案件で「この判断、どうしてこうしたか」を1行メモする。次に同じパターンが出たときに、そのメモを追記する。そうやって積み重ねていけば、半年後には十分な量の「判断基準」が残ります。その積み重ねが、いずれ誰かに渡せる資産になっていきます。


まとめ:属人化を整えると未来に渡せる

全部自分で分かっている。それは誇りです。でも、そのままでは未来に渡せません。AIの前にやることがあります。業務を言語化すること。構造を持たせること。 遠回りに見えて、それがいちばん速い。tugiloはそこから始めます。派手ではありません。でも、確実です。

tugilo視点まとめ

「全部分かっている」を、整理された形で外に出す。tugiloは要件定義・Fit & Gap・実装計画をテキストで構造化し、属人化を防ぎながら強みを活かす設計をお手伝いします。

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tugiloから一言

「全部分かっている」を、整理された形で外に出す。tugiloは要件定義・Fit & Gap・実装計画をテキストで構造化し、属人化を防ぎながら強みを活かす設計をお手伝いします。

業務の言語化や属人化対策でお悩みがあれば、お気軽にご相談ください。